基本問題で正答率2割 専門家『衝撃的』全国学力調査

これまで小野算数塾HPブログでも、小学生の学力低下が、デジタルコンテンツの活用、コロナショック、低学年からの塾通いや大手塾のベルトコンベアー的利用によってますます加速している現状を憂い、それは、コミュニケーション不足による(理解なしにプリントをただひたすら繰り返すのも同じ事)学習の前提である認知機能、非認知能力の低下が原因である訴えてきました。
衝撃の全国学力調査の結果が出ましたので、このことについて語っていきたいと思います。

「三角形の面積、基本問題で正答率2割 専門家『衝撃的』全国学力調査」
https://www.asahi.com/articles/ASR7X56R8R7WUTIL015.html
2023年7月31日 17時00分 朝日デジタル

この4択をアットランダムに選んでも25%の正答率があってもよいのですが、それを下回っています。
専門家が衝撃的結果だと評価しています。
問題について解説しますが、まず4年生で習うユークリッド幾何学の大前提である第5公理「平行」についての理解がないのではないでしょうか?当然教科書で習います。
「平行とは、どこまでいっても交わらない直線同士のこと」
「平行線の性質は、幅がどこも同じ」
「幅とは2直線の最短距離の長さのことで平行線に垂直に交わる」
これらのことが概念形成されていないとこの問題は解けません。公式云々の話ではなくて、どこも高さが同じになっているという感覚がないから「底辺が同じ長さだ!面積が同じになる!」となりません。
今の某大学某教育学部で数学の担当講師の方のお話です。授業で算数のプレテストで「1000円の2割引き」を「1000-2=998円」「1000÷2=500円」と誤答すると言います。「割引き、っていうから、割り算か引き算だと思ってるみたいだけど、掛け算だよ」と返却時に言うと、「どよめき」が起こるのだそうです。
さらに、「時速4kmで2時間進と、何km進みますか」という問いに対しても、多くの学生が「はじきを忘れたので、解けません」でした。※「やさかんョリ」をドラえもんの鈴に配した公式の図を「ハジキ」と言う。
これは、ネットで見つけた話なのですが、実際に新卒の社員に損益計算の仕事を振ると、2割増しなどの売買損益の基本計算を上司が教えないと出来ないということを直接聞いたことがあります。
ですから、悲しいかなこれが日本の現実なのです。
企業の理系人材が日本人で埋まらなくなってきているとは、随分前から言われてきたことですが、それは少子化要因ではなくて学力低下が原因のようで、いよいよ事態は深刻です。
これらのことからも、Z世代はデジタルネイティブですので、いかにデジタル化やYouTube等の発達によって学力が阻害されているのかは結論が出ているように思います。都市部では、低学年からの塾通いによる先取り学習や背伸びによるアンマッチな大は小を兼ねるという学習が止めを刺してします。これに輪をかけて、「褒める教育」が問題に拍車をかけ続けています。
※「褒める教育」がその場しのぎの誤魔化しであって、問題の先送りにしかならないと「ケーキを切れない非行少年たち」で宮口先生は結論付けられています。

小野算数塾では、「ハイテクよりもハイタッチを!」ということを提唱しています。学習の前提である認知機能(見る力聞く力想像する力)はコミュニケーションのなかで発達していくのだそうです。認知能力の発達にともなって、非認知能力がともに発達していきます。
非認知能力とは、主に意欲・意志・情動・社会性に関わる3つの要素
①自分の 目標を目指して粘り強く取り組む、
②そのためにやり方を調整し工夫する、
③友達 と同じ目標に向けて協力し合う。
からなる。
さて、某難関中学の入試説明会にて以下のような説明があったそうです。こうしたことを学校側がオープン情報としてアナウンスするのは、よほどの非常事態が起きていると考えられます。
【某難関中説明会より】
ベルトコンベア式に親から言われた勉強をし続けてきた子供が多く、入学後何をやるか言われないと勉強できない様子が見受けられる。
また、非認知能力が低い子が多く、6年間でどう非認知能力を高めるかが学校の最重要課題だ。
これについては子供達ではなく、受験が過熱しすぎている日本の今の世の中が悪い。
なお、本校は本課題解決のために新校長を迎えた。
(引用終わり)
以前に小野算数塾ブログ記事にて「キルケゴールの馴らされた鴨」の話をしました。世界的巨大IT企業IBMで「野鴨の精神を忘れるな」と社訓のようになっていることをご紹介しましたが、餌をくれる親切なおじいさんが死んでいなくなった際には、餌の取り方をもはや忘れてしまって、本来の餌を獲る能力、渡り鳥の能力を失ってしまっているという話でした。昔から中学の先生方から直接よく聞いていた現象ですが、説明会でそんな話が出るとは、さらに状況が悪くなっているということだと思いました。

今は、胎教から始まり英才教育の過熱は都市部ほど激しさを増しています。情報過多で素人レベルのデマゴーグが飛び交っています。小学校教育をバカにする傾向があり、受験の前提である小学校教科書内容の概念形成がおろそかになっています
文科省「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック低学年」には、次のようにあります。
次に大切なことは,低学年児童の特徴をよく知り,この頃の児童に適した学習指導のあり方を考えることです。低学年児童 の特徴の一つは,思考と活動が未分化な時期にあることです。つまり,「動くこと」と「考えること」が同時に進むのがこの頃の子どもたちです。また,様々な運動遊びの経験から,運動への肯定的な態度や多様な動きを身に付けるときです。(転載終わり)
1つ前の記事「受験の前提の崩壊「認知機能」と「教科書内容の完璧な理解と習得」は?」で1枚のある写真を載せました。校庭でみんなで棒とロープを使って円を描いている様子の写真です。次に再掲いたします。

これは、小学校で昔はよくやっていた風景です。学習指導要領に沿ってやっているのだと思いますが、思考と活動が未分化な時期なためこうやって身体を動かして円を描かないと概念形成が出来ないからこうやって円を校庭でわざわざ描いているのですね。身体で覚えなければ低学年は概念形成出来ないからなのです。実は大人にとって当たり前の「円とはある点から同じ距離にある点の集まりが作る図形」であるということがとても大切な概念が子供たちには放っておけば身に付かないのです。これをもう少し平易な言葉で教科書では教えています。またそれを体得するために実際に校庭だとか教室で具体物を使って習得するのです。
「そんなことぐらいわかるだろ?」と思われるかもしれませんが、放っておいたら算数概念が身に付かないからこそ、先にご紹介しましたように、
1000円の引き⇒1000-2
1000円の2割引き⇒1000÷2
と言葉に反応することしかできない大学生がたくさんいるのではないのではないでしょうか。
マスコミの恣意的な偏向報道が激しくなった今(都合の悪いとは報道せずになかったことにする黙殺権も有する)、熱心な先生は一部の声の大きい変わった保護者の標的となりマスコミの標的となりやすく、脚色された報道をされます。ですので、熱心に指導できなくなっているのが昨今の現状です。熱心であればあるほど衝突や摩擦が起きるのは自然の理です。それをいちいち声の大きい保護者が騒いでマスコミにリークされて脚色されて悪者として報道されていては、先生たちの命がいくつあっても足りません。ですから、義務教育はすでに崩壊していると思ってください。こうしたことから、熱心に指導してくれる先生はどんどん減っていると言います。馬鹿らしいですよね?ふつうに考えて一生懸命にやれば職を失うリスクが発生するのは明らかにおかしくないですか?
居残りをさせてくれて、指導してくれるというのに、習い事があるからと補習を受けずに帰ると言います。公教育をすっ飛ばすとは本末転倒です。学校が優先に決まっています。さらには、「なんで家の子だけ居残りさせていじめるのか?」とクレームを入れる保護者もいると聞きます。こんなことで公教育が成り立つはずがありません。
話をもとに戻しますと、高学年の児童と同じように低学年の児童にプリントをひたすらやらせてもダメなのです。たとえ高学年であっても訳も分からずにただひたすらプリントをやるのはデジタル学習であって、機械的学習でしかなくベルトコンベアーに乗っているだけであることに気付くべきです。高学年であっても、こうした低学年での概念形成が不十分なまま、低学年での学習が未熟なままだから、塾の受験テキストが出来ないのです。躓くのです。高学年の算数の学校教科書の内容でさえ習得出来ていないから偏差値が取れないのです。難しい問題だから解けないのではありません。

では、次に実際の東大受験生の英語における失敗談をご紹介いたします。
◆陥りやすい「背伸び」をしてしまうという罠~「分を越えた勉強はしない」という戒めが大切~
分相応の悟りとは難しいです。等身大の自分を見れるということは、これはある意味メタ認知力が高くて自分を客観的に見れているということなのです。これは、中学受験の場合親が子の身の程を見誤る場合がものすごくあって、子供が背伸びするというよりも受験情報に煽られた親が誤った判断をして失敗するケースがほとんどでしょう。ですから、信頼のおけるプロの言う通りにすることが肝要なのです。
ところが、進学校の高校の先生でもいろんな先生がいますから誤情報を与えて生徒の成績を下げていることはよくあります。「君は東大志望だったな。では、参考書なんかやらずに英字新聞を読まなければならない」などと言われて背伸びをしてしまうことがあります。また「朝日新聞の『天声人語』は入試によく出る」などという話を真に受けてしまうことがあります。出る学校もあるかもしれませんが出ない学校では絶対に出ません。
そして、「天声人語」の英訳を使って苦労して涙ながらに勉強するわけです。切り抜いた日本語の「天声人語」をノートの右側に、英字新聞の「天声人語」をノートの左側に貼って、英文を和訳できるか、そして今度は和文を英訳できるのかという勉強をするわけです。英語の「天声人語」を百字以内で要約したりするわけです。
すると、英語の成績がどんどん下がっていってしまうのだそうです。
同じぐらいの成績であったのに英語の成績がグー――ッとよくなっていった人は、何のことはなく、高校1年生のときに学校で指定されていた参考書『基礎からの英語』を使っていたのだそうです。高校3年生になって、「英語がよく出来るようになったけれども、君は何をしたのか?」と聞くと「『基礎からの英語』を10回やった」と言われたのだそうです。自分も高1のときに5,6回やっていたのだそうですが「えっ?あんなもんでいいのか?」と確認すると、「そう、あれでいいんだよ」と言われたとのことです。
このように、学校指定の参考書を繰り返し勉強した人は成績が高水準となり、英字新聞を読み始めた人はドーーーーーッと成績が下がっていくものなのです。
それは、受験英語に必要な語彙数は四千から五千語ほどであり、東大入試でも六千語にいかないのだそうです。ところが、英字新聞を読もうと思えば数万から十万語を超える語彙数が必要になるのです。
こうした背伸びによる成績低下は、英語に限らずよく起きるのですが、受験生は自分の志望校なり、実力なりの分を越えないように、しっかりと自分の実力に合ったテキストに取り組むことが一番効率的であり、合格のために必要なのは基礎基本の勉強なのです。
中学受験の場合には、塾間で苛烈な競争をしてきた結果、うちのテキストではこんなに難しいことを扱っているというアピールから、難問中心の解説でV.I.P.の皆様のハートを掴んで離さない努力をしているのではないでしょうか。そうでないと塾に行かずとも合格できるV.I.P.の皆様に入塾してもらえないからです。
※小学校教科書内容は完璧,6年までの受験基礎学力も完璧,あとはやることがなくて困っている人たちが世の中にはいるのです。そうした人たちが復習で、出来ない問題を探すために大手塾に通うのです。それならば、大いに成果があることでしょう。大手塾側もそうしたことはちゃんと家でやっておいてくださいと思っていることでしょう。それを勘違いして、レディネス十分な人たちと同じようにやっていては合格できるはずがありません。

◆多浪の原因は「先取り学習」「前倒し学習」で基礎が出来ていないことに気づかないこと
保護者の皆様に分かりやすい例として大学受験の例を挙げています。昔から駿台に現役時代に通うと浪人すると言われていました。それは、テキストが浪人生用になっていて難しいからです。ですから、現役なのに難しいことをやり過ぎて浪人すると言われていました。実際その通りのことが起きていました。
開成を出ても浪人を何回もする人が現実にいるのです。なぜかと言うと上記のことに、いつまで経っても気づかないので浪人し続けるのだそうです。ご存知のように開成では授業がどんどん進みます。ライバルと差をつけるため、さらに先取りをしてくれる塾に通う訳です。
ですが、東大に不合格になった場合にどう思うのかというと本人としては「やはり、力が足りなかった。もっとやらねばならない」と思って、もっともっと難しいものをあさり始めるのだそうです。
しかし、問題はどこにあったのかと戻っていくと「中学校あたりから欠陥」があるのです。
本来ならば、中学校で文法の基礎部分に時間をかけて、きちっと固めるべきところを固めていないのに、高校以降のかなり難しいものに入って勉強しているので、やたらと単語等は覚えていて、難しい文も読めたりはするのだそうです。
そのため、「自分にはそれくらいの学力がある」と思って、そういう勉強ばかりしていたのだそうですが、実は中学文法のところがいい加減だったのです。したがって、どこまで行っても不完全で、きちんとできないわけです。いわゆる砂上の楼閣です。こういうことは、本当に「受験あるある」なので成績が良くない場合には問題集を目の前に積むのではなくて基礎から徹底的に磨き直さないといけないわけなのです。
翻って中学受験の算数に話を戻しますと、大抵の場合は受験の算数だから出来ないのではなくて、小学校の算数、もっと言えば低学年の算数という基礎基本の繰り返し繰り返しの訓練不足が原因で概念形成できていないにもかかわらず、目線がもっと難しい問題を解かなくてはならないのだと、どんどんどんどんと問題集を解き続けていって結局何も身につかないどころか、「当たり前のことを当たり前に考える」ことすらできなくなっているのです。そういう受験生が毎年山ほどいます。やらなければならないことは基礎基本の磨き上げで概念形成です。使い物になるまで磨き上げて意味を理解して「生きた知識」「使える知識」にまでにしないといけないのです。

結局、発達段階を無視した「先取り」をしたり、自分の実力に見合わない分不相応な「背伸び」をしても学力は伸びません。グーグルの社員証には「清掃の徹底」とあるそうです。約5000社を倒産の危機から救った伝説のコンサルタント一倉定さんは、「整理整頓」を徹底されたのだそうです。
意外かもしれませんが、基礎基本の大切さを悟ったものが合格できるのです。
「凡事徹底」こそ合格への鍵なのです。

最後に、某超難関中の進路指導の先生の高3へのメッセージをご紹介して終わりたいと思います。
◆圧倒的な基礎力
ここ数年で非常に強く感じていることがあります。それは、難易度の高い模試よりも、標準的な模試の方が結果に対して非常に強い相関があるということです。これは、大学入試という、普段とは異なる精神状態であるときに、発揮できる能力は、自分自身に残っている基礎の部分だということです。その部分をおろそかにしている人は、最後の最後で涙を流すことになり、この部分を越えずに身に付けたハリボテのような能力は、最後の大事な時に自分を裏切っていくのです。このことは、これまでも先輩たちが述べてきていることです。基礎の重要性は、大学入試が終わったときに、初めて、先輩たちは口にします。そして、そのことを学校生活での日々の生活(授業は当然であるが、それ以外のこと)から多く学んできたことを述べています。
うれしいことに、今年も多くの先輩たちが、君たちの目指す大学に合格してきています。その先輩たちが、授業の教材がどの問題集よりも良かったことも話してくれます。そして、朝の英単語テストや漢字テストがあったからこそ、その当時は気づかなくても、自分の中に土台ができたのだと話してくれます。
ただし、基礎という部分を間違えて理解しないでください。基礎の定着とは、簡単な問題が解けるということではありません。基礎の定着とは、物事の本質・仕組みを捉えて、いつでも引き出せる状態になることです。大学入試は、都市によって大きく傾向を変えたりします。ですから、大学ごとの対策を立てた学習をすることも大事なのですが、それ以上に、どのように問題傾向が変わっても対応できるコアな部分を持つことです。このコアな部分が基礎力で、その基礎力を幅広く応用できる能力こそが難関大の入試で最も必要な力になるのです。
つまり、基礎のベースを上げていくのが、これからの課題なのです。(転載おわり)

東大、国立大医学部を多数出している学校でさえ、こうしたことを言っています。全国で一番であろう灘では、高3生に10月時点で最も標準的な模擬テストを受験させていますが、これらのことは、基礎の重要性を分かっている学校とその生徒こそが超難関大の合格を勝ち得ていることの証明でもあります。
ましてや、中学入試で問える思考力には限界があります。「当たり前のことを当たり前に考えられる」ことを学校は見たいだけなのです。大手塾がこんなに難しい問題をと煽っているかもしれませんが、合格した人たちも解けなかった問題をこんなに難しい問題と提示されても説得力がありません。
コツコツと基礎を積み上げていかないと、結局はハリボテの学力だと空の袋が立たないことは小学生でも分かることだと思いませんか?それがわからなくなっているのが競争が激しすぎる中学受験の世界なのです。
凡事徹底でコツコツと基礎学力を積んで袋の中身を詰めていくことこそが、中高大、そして社会人へと健やかに学力を伸ばしていくための、学力崩壊させないための唯一の方法なのです。この世に魔法の方法など存在しないと悟って、コツコツと泥臭い努力をしていくことこそが大切なのです。

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