中学受験で合格するための低学年での過ごし方について

「3歳までに脳の配線が決まる!!!」などという脅し文句を聞かれたことがあるかと思います。また、幼児期や低学年でもどんどんと知識を吸収していきますから我が子は天才かとお思いになられるかもしれません。早期教育で決まるのだという情報も飛び交っています。ただ、どんどん覚えるからと言って駆け足で学年を先取りしていったとしても、いつの間にかただの人になっていたという例は後を絶ちません。こうした教育産業の営業トークは話半分で聞いておいた方が良いです。なぜならば、子供たちには発達段階というものがあり、脳も少しずつしか発達していかないのです。ですから、脳の配線が決まるとか焦ってどんどん詰め込んで脳の配線を逆にぐしゃぐしゃに混線させてしまっていないでしょうか?その時期時期にやるべき最適なことがあるので、早期にどんどん覚えさせていったり、どんどん先取りしたとしても、大きくなったら全部忘れていたり、逆に脳が正常に発達せず知性が破壊されただけになることもあります。

そもそも中学受験は足の速い子のための受験なので、昔であれば飛び級していた子たちなので、ある程度カリキュラムを先取りすることは必要です。しかし、低学年の時期にやるべきことを飛ばして高学年の内容をやるととんでもないことになります。低学年の内容もペーパーレベルのことが出来ているからと安心していませんか?高学年は座学でペーパー中心ですが、低学年はまだまだ体験や体得といった「習うより慣れろ」という「訓練」「躾」の部分が大きいのです。感覚として身につけなければならないことがたくさんあるのです。ですから、何度も何度も繰り返し単純なことを身につけていかないと、6年生になって偏差値が60もあるのに、「順序数(前から何番目)」と「集合数(前から何人)」といったことが出来なかったり、(※数列における1ズレの問題)「和分解」と言われないと手が動かなかったりします。みなさん1年生の算数をバカにされていて「たし算(あわせていくつ)」と「ひき算(ちがいはいくつ)」の計算が出来ればいいだろうぐらいに思っているかもしれませんが、結構入試でもその考え方に関する問題が出題されているのです。n進数(法)なども1年生で習う10進数をもととして2進数3進数の仕組みがあるのです。「和」と「差」の概念も大切な身につけるべきことなのです。

にもかかわらず、低学年から高学年の問題集を簡単にしただけの焼き直しのような問題集でペーパーワークをどんどんやらせても、あまり意味がないということになります。小学校の科目は実際の生活に密着した具体的かつ現実味のある事柄がほとんどです。算数もその例外ではありません。実生活のなかでいかに算数を現実味のあるものとして体得できるかということが重要なことなのです。ですので、小学校ではあれだけの時間数を取って概念形成を体得させているわけです。たったあれだけの内容を1年かけて習得させるのには意味があるのです。特に親が書類仕事やさまざまな活字を大量に読むような仕事をしている場合に、そうした訓練をバカにする傾向があり子供たちも影響を受けます。「少ない量を精読して繰り返し訓練することは後にとても大きな力になる」ということを言っておきたいと思います。

また、幼稚園時代にあまりストーリーを追って読書するようなものばかりを与えていると小学校に入ってからの訓練を嫌がるようになることがあるため注意が必要なのです。

そうなのです。親が教育熱心であることによって弊害が出てくるのです。いろいろな知識を与えたがる過程では知識教育を推し進めすぎてしまい、繰り返しの訓練をないがしろにする傾向があるのです。子供は覚えたことを1カ月もすればすべて忘れてしまうことを知っておいた方がよいでしょう。

よくあることなのですが、どんどん学習を進めていくタイプのお家の子供は基礎基本で躓いていることをなかなか認めたがらずに、「そんな簡単な問題なんて今更やれるか」となってしまって、「もっと難しい問題」と言って頑張るのですが、かなり昔にやったことなので忘れているということに気づかないのです。そしてさらにテストの結果がボロボロになっていきます。

2年生かけ算3年生わり算でも身につけなければならない概念があるのです。これらを身につけないといけないのですが、わりと最近は計算が出来ればOKということで意味も分からずに進んでいる場合が多いです。これらの計算式の意味が分からなければ文章題が解けなくなります。意味が分かっていないので使えないのです。答えで何が求まったのかが分からなくなるのです。塾やネットでよく「小学校の先生たちは、かけ算の順番をうるさく言うけれども数学で習うことになる交換法則を知らないのか?」という意見があって、どうでも良いのだという派がいますが、とんでもありません。算数は数学ではないので数学で論じている時点で論が破綻しています。しかも、私から言わせてもらえば「小学校でも計算の順序で順番を逆にしてもよいと習っていることを知らないのか?」ということになります。これらは、わり算になってから「等分除」と「包含除」という2つの意味を習うのですがかけ算の意味が分かっていないとわり算が分からなくなるのです。わり算の意味が分からないと「小数」や「分数」が分からなくなります。また、「単位量当たりの大きさ」が理解できなくなり、ひいては「速さ」「割合」「比」といった単元が意味不明になって算数・数学が終わってしまうのです。算数はすべてつながっているため、概念形成を綿密に設計してあるわけです。ですので、小学校の先生方、こうした「かけ算の順番なんてどうでもいいのだ」という風潮に負けずに頑張って教えてあげてください。特に都市部では親がインテリで高学歴の場合も多く見受けられ、幼稚園や小学校の先生たちが言うことを軽んじて言うことを聞かない傾向にあります。これが後々の大きな躓きの元になっているということも付け加えて言っておきます。※かけ算とわり算の概念形成の詳細はここでは割愛させていただきます。※かけ算の文章題の立式は順が関係ありますが、計算する段であれば当然ですが順序は桁の少ない数を数をかけたほうが簡単に計算できて、暗算できたりします。その順序まで守れというのは違うと思います。

小学算数にご意見のある方はちゃんと学習指導要領を学んで算数の概念形成の大切さを勉強してからご意見されるようになさったほうが恥をかかずに済むと思います。かなり昔のことで覚えていないのかもしれませんが、いったん概念形成したら当たり前の事でも、これから習う子供たちにとっては先天的に概念は形成されていないのです。自転車に補助輪なしで乗る時には随分と悩んだり転んだり手伝ってもらったりして乗れるようになったかと思いますが、乗れるようになったら思い悩む必要はないのです。身についてしまったから当たり前に乗れるのです。すっかり忘れていてもそれは仕方のないことだと思いますが、昔の先生たちのご苦労ご恩を忘れてしまっている大人の皆さんは感謝の念を持ってもバチは当たらないことと思います。

これらのことを概念形成と言います。

適切な時期に適切なことをしていないと後で大変なことになりますから、分相応でコツコツと前進していってください。(2%いるというギフテッドのみなさんはどんどん進んでください。)ほとんどの人は、低学年で間違った促成栽培をせず、中学受験の時にアウトプットばかりの頭を使わない機械的な学習で知性を破壊されていなければ、(大量の宿題からの睡眠不足による脳の萎縮なども含む)努力次第で東大には入れます。東大理三は難しいかもしれませんが、それ以外なら合格できることでしょう。

さて、小学校低学年と小学校高学年とでは、違う生き物だとおっしゃる先生がいらっしゃいます。その通りでやはり低学年は動物的属性がまだまだ強いので、規則正しく人間らしい生活習慣を身につけないといけなくて、躾と同様に繰り返し繰り返し来る日も来る日も訓練しないと身につかないものなのです。覚えてもすぐ忘れます。(知的可塑性に富み知的排泄力が強い)逆に忘れるからどんどんと吸収できます。ですから、繰り返しの訓練が大切なのです。また、低学年は素直で自我が芽生えていませんから記号的暗記に最適です。高校生に文字を教えようとしたら、文句ばかり言うでしょうね。想像してみてください。「なんでこれが『あ』なんだ」とか理屈ばかりこねくりまわして素直に習得できないことでしょう。なので記号的暗記の時代にいろいろと基本的なことを学ぶのです。単純な漢字や単純計算も低学年のうちに習得するわけです。そして、低学年の算数は暗算レベルですべて処理できるぐらいになっていないと高学年の計算ができなくなり、「倍数と公倍数」「約数と公約数」「最小公倍数・最大公約数」が出来なくなって、分数計算で躓くのです。このように芋づる式に算数はすべてつながっている科目なので、きちんと低学年の内からコツコツと土台を積み上げていく必要があるのです。

私も教育県でもある出身県の小学校の先生方に概念形成していただいたおかげで今の算数数学の力があると感謝いたしております。

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